研究概要 |
筆記条件に大きな制約がなく, 日本人が日常生活の中で書く文脈のある文字列の中より抽出する「日常手書き文字」データの収集と, その特徴量の定量的解析を目的として, 以下の研究成果を得た. 1.日常手書き文字を収集する方法が大きな問題であるが, 学生が「見学報告書」及び「講演会報告書」をしばしば提出することに注目, これを利用して大量の日常手書き文字を収集した. 収集のために, 市販のA4版大400字詰め原稿用紙と同形式で, 罫線が筆記者の目には見え, 収集システムには見えない色の収集用紙を設計し, 作成した. 2.作成した上記収集用紙を用いて, 本校の学生に見学報告書と講演会報告書を書かせ, これを日常手書き文字データとして多数収集した. 3.漢字, ひらがな等種々の文字が雑多に並んでいる文脈のある文字列の中から必要な文字を切り出し, ディジタルデータ化することには多くの困難が伴うが, 前年度科学研究費の補助を得て開発した文書画像処理シスフムを今年度大幅に改良, 大量の日常手書き文字収集システムとした. 4.開発した上記システムを用いて, 種々の手書き文字をディジタルデータ化し, 目下日常手書文字データベースを作成中である. 5.収集したデータを使用して, 手書き文字の特徴を抽出, 筆記条件の違いにより字形にどのような変動が生じるかの解析を行った. 即ち, (1)全く同じ筆記条件で記入した反復記入文字が, 書く時期の違いあるいは時間の経過により, その字形が大きく変動すること. (2)特に単純な字形の文字ほど変動が大きいこと. (3)同一字種を反復記入という制約下で書かれた文字の形と, それを書いた同一筆記者が, 文章中に自然な状態で書いた文字の形との間には更に大きな字形変動がある. ことが判明した.
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