研究概要 |
炊飯過程において蒸らしは忘れてはならない操作の1つであり, 一般的には10〜15分が望ましいとされている. この蒸らしの効果を明らかにすることを目的に実験を行った. 飯の糊化度は, 炊飯直後の飯粒全体では蒸らしの有無により大差はないが, 蒸らさない飯粒の中心部はやや低い糊化度となり, 蒸らし中に中心部の糊化が進むことが明らかになった. 赤外線照射による脱水速度は, 蒸らさない飯で特に大きく, 飯粒表面の動きやすい水分の付着が多いと思われた. この水分の存在がつやと関係しており, 蒸らしを行わない飯のつやは大であった. また, 飯粒横断面を顕微鏡により観察した結果, 蒸らしを行った飯は飯粒表層部に付着物がみられ, 表層部に近い部分の細胞もかなりくずれていた. そこで, まず, 飯粒表面の水洗液中に溶出した糖について検討した. 還元糖, 全糖ともにその溶出量に殆んど差がなかった. 飯水洗液の糖組成をペーパークロマトグラフィーで検討したところ, 蒸らしを行わない飯は, グルコース,マルトトリオース,マルトテトラオースなどの但分子のマルトオリゴ糖を含有する割合が多く, 蒸らしを行うと, マルトヘキサオースおよびそれ以上の大きな分子量の糖の溶出が顕著であった. この高分子領域の糖組成については, さらに高速液体クロマトグラフィーによって検討するため, カラムの選定を行ったところ, shodex Ion Pac KS-806+805+(804)による分離が可能であった. 今後はこれらのカラムを用い, 詳細な検討を進めていく予定である. また, 蒸らしを行わないと小さい飯粒が多く残っており, 蒸らしの中にも飯粒の膨潤は進んでいると推察された. さらに, 蒸らさない飯では, 鍋の部位間における飯粒の大きさのばらつきの差が大きく, 蒸らしが飯粒の均一化に効果のあることが示唆された. 飯のテクスチャーは, 蒸らさない飯の方がやわらかく, 付着性, 凝集性ともに低い値となった.
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