研究概要 |
1.1665〜1666年頃のニュートンの数学(十月論文を中心とするもの)とニュートンの力学(Waste Bookにおけるもの)との間に直接の関連はみられない. ただし, 円運動における遠心力の大きさを計算する場合に, 無数の無限に小さなものをすべてたしあわせるところに積分的な考え方が導入されている. 2.1667〜1668年の「羊皮紙マニュスクリプト」の裏では, 太陽のまわりの諸惑星の運動を円運動であるとして, ケプラーの第三法則を用いて逆自乗力を導き出している. この場合, 円運動における遠心力の大きさを求める場合に極限論法が用いられている. 3.1679から1680年にかけてのフックとの論争を通して, ニュートンは遠心力の考え方から求心力の考え方へと転換する. そして, ニュートンはこの論争の結果, ケプラー運動にとりくむが, そこで面積速度一定の法則を証明する際にも逆自乗力を導出する場合にも極限論法を用いている. 4.ニュートンにおける力学と数学との関連において注目されるべきものは『プリンキピア』における数学である. ニュートンはケプラー運動から逆自乗力を導出する時, 現代ならば微分すべきものを, 初等幾何学と極限論法によって導いている. ここでは直接流率法が用いられているとは言えない. だが, 第二篇の抵抗ある媒体中の物体の運動を論じる場合には流率法が全面的に用いられている. 5.力学と数学との関連においてもっとも大切なのは, 両者が出会う場としての空間概念の形成である. それは1668〜1669年の論文De Gravitationeにおいて行われた. ニュートンは, 空間は(1)三次元連続体である, (2)その拡がりは無限である, (3)そこに座標が導入できる, (4)それに1次元の時間を加えると慣性系となる, (5)それは神の流出結果である, といった性質をそなえているものとした.
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