研究概要 |
本研究では, 走運動における力学的な出力パワーと, 生理的な入力パワー(酸素消費量)および効率(出力/入力)について, 発育・発達の視点から年齢の異なる中・長距離選手の特徴を明かにしようとした. このため, 中学生の男子中・長距離選手4名(13〜15歳), 大学生の男子中・長距離選手3名(19〜22歳)を被験者として, 三段階の異ったスピード(245,268,290m/min)の等速度走を課し, 出・入力パワーを測定した. 出力パワーの測定は全天候トラックで行い, 走路に埋没したフォースプレートの地面反力から外的パワー(身体重心を加速するパワー)を算出するとともに, 16mmシネカメラ(100コマ/秒)で撮影したフィルムから内的パワー(肢運動のパワー)を計算した. 一方の入力パワーは, 屋内トレッドミル走時の酸素消費量を定量することによって求め, 出力パワーと合わせて次式により効率を算出した:効率=(外的パワー+内的パワー)/(入力パワー). その結果は概略次の通りである. 1.出力パワー:外的出力パワーは, 三種スピードのいずれにおいても, 中学生より大学生選手の方が大きく, その差は体重当りにして0.6〜1.0watt/kg(10〜16%)であった. しかし肢運動のための内的パワーにおいては, 逆に大学生より中学生の方が大きく, その差は1.4〜2.2watt/kg(38〜51%)の大差であった. このため総パワー(内的+外的)では〔中学生>大学生〕となった. 2.入力パワー(エネルギー消費量)は, いずれのスピード条件下においても中学生の方が大きく, 体重当りにして0.4〜1.4watt/kgの差が認められた. 3.効率:スピードの増加とともに中学生の効率値は高くなる傾向を示したのに対し, 大学生では低くなり, このため, 両年齢群の効率は最低スピードでのみ大学生が勝り, 他の2スピードでは中学生の方が勝るという結果を示した.
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