研究概要 |
イケチョウガイ卵のアセトン粉末をリン酸緩衝液中で超音波処理し、100,000xg30分遠心分離して得られる上清を33%飽和硫安分画し、さらに100,000xg25時間遠心分離した。この上清を、Biogel Pー100およびウロン酸含有糖脂質をリガンドにしたoctyl-Sepharoseカラムによって処理して一つの画分を得た。このものは、精子および糖脂質リポゾームに対して強い凝集反応を示した。また、この物質はウロン含有糖脂質以外のイケチョウガイ精子糖脂質に対するいずれのリポゾームとも凝集反応を全く示さないことから極めて高い特異性を有すると考えられた。一方、精子凝集阻止実験の結果から卵レクチンの認識活性部位はこの酸性糖脂質の非還元末端からの二糖残基(GleA4Me-Fue)であることが推定できた。また、卵レクチンの^<125>Iー標識化を行って、TLC上でのbindingを試みたところ、ウロン酸含有糖脂質のみが陽性であった。一方、このレクチンをSDS-polyacrylamidogel上に電気泳動後、ニトロセルロース膜へ転写してから、^3Hー標識ウロン酸含有糖脂質とのbindingを行ったところ、100K(Da)、80K、60K、40Kおよび20Kの5本のバンドに標識糖脂質が結合することを認めた。このことより結合性を有するレクチンのうち最小分子量のものは約20Kであることが予測できた。また、レクチンおよび抗レクチン抗体を用いて受精実験方法が確立化されている海産二枚貝のムラサキイガイ(Nytilus edulis)の受精阻害効果を調べた。阻害剤としては上述のレクチン、抗レクチン抗体のほかに抗ウロン含有糖脂質抗体を用いて受精に必要な充分量の卵および精子を含む溶液と混合して、プラスチックシャーレー中、23℃で行った。経時的に一定量を採取して受精の進行度を観察すると共に、2時間後の第一分裂(2細胞胚)時に計数した。その結果、コントロール(正常発生)と比較して阻害剤を添加したものにはいずれも受精阻害が認められた。
|