研究概要 |
1. 酵母ミトコンドリアATP合成酵素にはATPアーゼインヒビターの外に2種の蛋白性活性調節因子が存在し, 3者が協同して同酵素の活性調節を行っている. ATPアーゼインヒビターと9K蛋白はATP合成酵素(F1部分とF0部分から構成されている)のF1部分にin vitroでそれぞれ1対1のモル比で結合する. そこで両者が共存する条件下での結合について検討した. 両者を同時にF1-ATPアーゼに添加すると両者は競合的にF1部分に結合した. 次にF1とATPアーゼインヒビターの複合体に9K蛋白を添加しても交換反応は起きなかった. この逆の場合でも交換反応はみられなかった. このことはこれら両蛋白はミトコンドリア内膜上ではF1に対していずれか一方が結合することによって活性調節を行うことを示唆している. 2. 15K蛋白はF1部分には結合せず, F0部分に結合することが明らかになった. 15K蛋白が存在しない条件下ではATPアーゼインヒビターも9K蛋白もF1部分から解離しやすくなるが15K蛋白が存在すると両者ともF1部分に結合する. しかしこの場合でもF1部分に結合するリガンド蛋白としては両者のうちいずれかであり他方はゆるい結合にとどまっている. このことからATPアーゼインヒビターと9K蛋白は15K蛋白を介在してF1部分にいずれか一方が結合するメカニズムになっていると予想された. 3. 実施計画になったATPアーゼインヒビターと9K蛋白の相互作用, F1部分と両者の相互作用のNMRによる解析は実施できなかったのでさらに追求する予定である.
|