研究概要 |
スフィンゴ糖脂質に分解酵素が働く為には糖蛋白質性の活性化因子が必要不可欠である。現在3種類の活性化因子(SAP_S)が知られておりいずれもゴルジ装置からリソソームにとりこまれることから、リソソームへの認識標識を探るための格好の研究対象となっている。我々はまず、正常組織由来のSAP-1,2,3の糖鎖構造を比較研究した。いずれも活性化因子の糖鎖構造も定性的に同じで、複合型糖鎖の分解産物と考えられる構造であることが明らかとなった。この結果はいずれの活性化因子の糖鎖も通常の細胞ではリソソーム酵素によって二次的に修飾を受けており、これらの中から輸送機構に携さわる土定の糖鎖を探し出すことは困難であるとの結論に達した。そこで、先天的にリソソーム性βーガラクトシダーゼの欠損したGM1ガングリオシドーシス患者肝由来のSAPー1を精製して糖鎖構造の研究を行なった。その結果、いずれもN__ーーアセチルラクトサミン構造を1から4本鎖に有する複合型糖鎖で、その15%にはシアル酸が、約50%の還元末端にはフコースが結合していることが判明した。この結果から、SAPー1の認識標識として、1)還元末端のN__ーーアセチルグルコサミンに結合したフコース残基;2)特定のシアル酸残基;3)N__ーーアセチルラクトサミンを含む特定の分枝構造等が考えられる。現在、これらの作業仮説を基にしていずれの糖鎖構造がリソソームへの移行標識となっているか追跡中である。また、ヒト白血球および尿から精製したリソソーム性リボヌクレアーゼもSAP_Sの糖鎖と類似した構造であることも明らかにしている。 一方、本研究を遂行する為に糖鎖の微量分析法を確立することが必要不可欠であった。そこで、不溶化DSA,All_0,E-PHA,L-PHAカラムの詳細な糖結合特異性を明らかにし、それらの特異性を駆使して始めて本研究を成功に導くことが可能となった。
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