研究概要 |
最近, 筆者らの研究室で発見されたチャージリンIIは, 分子量の比較的小さい疎水性の高いタンパク質で, 免疫生化学的解析により真核生物における酸化的リン酸化のエネルギー変換において重要な働きをしていることが明らかとなっている. 本研究では, 高速液体クロマトグラフィーにより高純度に精製された無標識のチャージリンIIの一次構造の解析を行った. まずはじめに, チャージリンII精製標品を気相アミノ酸シーケンサーにかけたが, PTH-アミノ酸のピークは全く観察されなかった. そこで, チャージリンIIの断片ペプチドを得るため, リジルエンドペプチダーゼを加え反応した. ついで, 反応生成物を逆相カラムにかけた結果, 5つの断片ペプチドとして溶出された. 得られた断片ペプチドを気相アミノ酸シーケンサーにかけ, アミノ酸配列の決定を行った. その結果, 5つの断片ペプチドのうち2つについて計12残基のアミノ酸配列が確認された. 今回決定したチャージリンIIの断片ペプチドのアミノ酸配列について, NBRFのデータベース等を用いホモロジー検索を行ったところ, ミトコンドリアのDNAに存在する未同定読み取り枠URFA6L(unidentified reading frame A6L)遺伝子のコードすると思われるタンパク質と高いホモロジーを有することが判明した. また, チャージリンIIのアミノ酸組成は, URFA6Lがコードしていると思われるタンパク質のアミノ酸組成と一致した. 従って, チャージリンIIは, URFA6L遺伝子によってコードされていると結論できるものと思われる. チャージリンIIの二次構造の解析をChou and Fasmasman法により行ったところ, 主としてβ-sheet構造をとっていることが推測された. また, 10位から26位の領域が, トランスメンブラン領域であることが予測された. 今回の発見は, ラット肝ミトコンドリアのURFA6L遺伝子がコードしていると思われるタンパク質が同定精製された最初の報告である.
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