研究概要 |
1。奄美ハブ毒からのフラボキソビン(凝固酵素)のアミノ酸配列。 奄美ハブ毒よりトロンビン様活性をもつ酵素を精製した(Shieh et al.,(1985)J.Biochem.98,713〜721)。この酵素は、フィブリノーゲンに作用し、フィブリノペプチドAのみを遊離して凝固させる。分子量約26,000の、ジイソプロピルフルオロ燐酸により阻害をうけるセリン型プロテアーゼであり、フラボキソビンと命名した。還元Sーピリジルエチル化タンパク質を調製し、これのエドマン分解により、N端約50残基の配列を決定した。ブロムシアン及びクロストリパインによる全配列タンパク質の消化により、ペプチド断片を得た。オーバーラッピングペプチドを得るために、必要に応じて、これらの断片をV8プロテアーゼ、アクロモバクタープロテアーゼI及びヒドロキシルアミンで消化した。これらの断片の配列を検討して236残基よりなるフラボキソビンのアミノ酸配列を決定した。 2。奄美ハブ毒からの塩基性タンパク質I及びIIのアミノ酸配列。 これらのタンパク質は、フィブリノーゲンのA_α鎖の中央部分を切断する酵素として精製された。ブロムシアン及びプロテアーゼ類による消化によって得られるペプチドのアミノ酸配列を検討することにより、塩基性タンパク質I及びIIのアミノ酸配列を決定した。しかし、これらの配列は、ホスホリパーゼA_2に類似するものであり、Lys-49ホスホリパーゼA_2といわれる過去に2例しか報告がない貴重な酵素であることが明らかとなった(活性は同じハブ毒中のAspー49ホスホリパーゼA_2の1ー2%)。結局、フィブリノーゲン分解活性は、このタンパク質標品中に含まれていた微量の金属プロテアーゼによることが明らかとなった。今後、微量ではあるが、この興味ある活性をもつ金属プロテアーゼの完全精製に取り組む予定である。
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