研究概要 |
ラットアルドラーゼB遺伝子(以下B遺伝子)の組織特異的な発現機構を解析するために, B遺伝子に組織特異的な転写に関与するシスエレメントの解析, そのようなce l type-specific promoterに結合する因子の同定およびその発現に関する解析を行ない, 以下のことが判明した. B遺伝子上流域をCAT遺伝子に結合させたもの, およびその5欠失体を種々作成し, いくつかの培養細胞に導入しCATの発現を見るという方法(CATアッセイ)でB遺伝子のプロモーター領域を検索した結果, cap site上流-520〜-120bpの領域中に, call type-specificに機能するプロモーターが存在することが判明した. 次に上記領域に結合する因子の存在をDnase Iフットプリント, ゲルシフトアッセイ, およびサウスウエスタン法で調べた. Dnase Iフットプリントから-160〜-100bpの領域中に少なくとも3カ所(5側から, サイトC,サイトR,サイトA)の蛋白結合サイトがあることが判明した. このうち2カ所, サイトAおよびCは同一の蛋白によって認識されることがゲルシフトアッセイによって示された. 蛋白の認識する塩基配列から上記サイトAおよびCに結合する因子はすでに報告されているAP-Iあるいはそれに関連する因子であると予想された. サイトBに結合する因子は, 胎仔の発生過程で増加し, 化学発癌過程で減少する. サウスウエスタン法でこの因子の分子量を調べた結果, 約32.5Kであった. この結合活性の増減は, B遺伝子の転写活性と相関するので, B遺伝子に正に作用するtrans-actingj因子と考えられた. 現在本研究で見いだした因子の精製を行っており, それらの機能をin vitroの転写系でくわしく解析することを考えている. また, 上記因子が多の肝特異的な遺伝子に対し同時に作用するかどうかという点も興味あるところである.
|