研究概要 |
発生初期の海産甲殼類Artemia(brine shrimp)には、(Na,K)ATPaseは存在するにもかかわらずその活性が検出されず、調節性の阻害因子の存在が推定されていた。本研究の目的はその阻害因子の実体および作用機構を解明することであり、以下の知見が得られた。 1.Artemiaの阻害因子は蛋白質分解酵素に耐性で、且つ耐熱性。 2.さらにDNaseやRNaseにも耐性であり、有機溶媒で抽出された。 3.薄層グロマトグラフィーで2つの画分に分かれたが、両方とも高級脂肪を含んでいた。 これらの結果から、阻害因子は高級脂肪酸およびその誘導電であると推定した。したがって阻害因子にー高級脂肪酸ーは当然のことながらnauplius幼生にも存在した。 高級脂肪酸およびその誘導体による(Na,K)ATPase阻害様式を明らかにするには、可溶化脱りん脂質した酵素を調製しその特性および脂質との相互作用を調べる必要がある。そこでArtemiaの(Na,K)ATPaseについてこれを実行し、以下の結果を得た。 4.両イオン性界面活性剤、CHAPSで可溶化後カラムを通して脱脂質しても、酸素1分子当たり10ー15分子のりん脂質が結合していた。 5.脱脂質した酵素は活性を示さないが、りん脂質を再添加すると活性が回復した。この際K^+共存下のほうが活性の回復率が高かった。 6.K^+共存下のほうが再添加りん脂質は酵素に強固に結合した。 これら研究成績のうち、後半部はすでに専門誌(J.Biochemistry)に発表され、また前半部は現在投稿準備中である。尚、やはり海産動物であるホヤにも阻害特性を検出したが実体を同定するには至らなかった。
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