研究概要 |
1.粒径がほゞ均一なヘマタイト粒子を作成し, ヘマタイト上へのコバルト(Co-57)の吸着に及ぼす亜鉛添加の効果について, 温度15〜70°C, pH=6〜9.5の範囲で調べた. 吸着量は, ヘマタイト粒子添加前後の溶液中のCo-57の放射能濃度から求めた. その結果, 無担体の場合には, コバルトに比べて亜鉛添加量が多くなると, ヘマタイト上へのコバルト吸着量は減少するが, 担体を含む場合には, コバルトと亜鉛が等量程度では, コバルトの吸着量の減少は少ないことが明らかとなった. また, コバルトの分配比の温度依存性から, pH=7で, ヘマタイト上へのコバルトの吸着熱を求めた結果, 亜鉛添加と共に吸着熱が増大することがわかった. これは亜鉛の添加量の増大と共に, ヘマタイト上への吸着する亜鉛量が増加するため, コバルトの吸着が困難となり, 吸着熱が増大するとして理解される. 2.ヘマタイト上へのコバルトの吸着状態を調べる前に, 固体内でのコバルトの存在状態を求めるため, ヘマタイト中のコバルトをドープした試料の発光メスバウアースペクトルを測定した. その結果, ヘマタイト中の鉄イオンと同様, コバルトイオンは3価の状態で, 酸素から構成される八面体位置に入り, コバルトイオンの内部磁場は, ほゞ鉄イオンと同一であることが明らかになった. 3.ヘマタイト上へのコバルトの吸着状態を調べるため, Co-57の発光メスバウアースペクトル測定を行った結果, 吸着前のヘマタイトと比べて, 吸着したコバルトの内部磁場が弱く,また線巾が広いことが判った. これは固体内に存在する場合比べて, 固体表面に吸着しているコバルトはヘマタイトとの相互作用が弱いためである. またラングミア流の単分子吸着ではなく多層吸着しているため, 線巾が広くなるのであろう.
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