液体ナトリウムは高速増殖炉の冷却材として用いられているが、配管破損などの事故によって大気中に漏洩すると、火災に発展する。本研究では、原子炉施設の設計及び安全性評価の向上に必要となる工学的な燃焼実験データを得ることを目的とする。実験においては、密閉燃焼容器内でナトリウムプールを燃焼させ、酸素消費量の測定及び反応生成物の化学分析から雰囲気中の酸素濃度が発火温度や燃焼率におよぼす影響を調べた。また、実験結果を別途、開発した蒸気層モデルに基づく計算結果と比較、検討するとともに、ビデオシステムによる燃焼状況の観察結果からナトリウム特有の燃焼モデルに関する考察も行った。主な結果は以下の通りである。 (1)ナトリウムの燃焼は石油のそれにくらべて火炎の高さが非常に小さく、液面附近に限られる。燃焼面積はプール温度が高いほど大きくなる。 (2)酸素濃度が5mol%以下ではナトリウムは発火しない。 (3)発火温度は雰囲気中の酸素濃度が高いほど高くなる。 (4)一酸化物生成率は酸素濃度が高いほど少し低くなる。しかし、プール温度に対する依存度はみられなかった。 (5)燃焼率は、低酸素濃度(10mol%)の場合、数値計算結果より高くなるが、高酸素濃度(21mol%)の場合は計算値より低くなる。 (6)プール表面上の残留酸化物はプール温度が高いほど少なくなる。
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