研究概要 |
線虫C.elegansの調節機構に関すると予想される変異株を分離するために, 以下の実験を行った. まず, 野生株に対し種々の薬剤および処理法の効果を検討した結果, 突然変異株選択の条件として, (a)150〜400μg/kgのフッ化ナトリウム, (b)飽和8-アザグアニン, (c)4°C10日の低温処理の3つを用いることに決定した. 次に, メタンスルホン酸エチル(EMS)により変異を誘起したC.elegansに上述の選択を適用し, 8株のフッ素イオン耐性変異株(成長の遅いもの7株と正常のもの1株), 2株の8-アザグアニン耐性変異株および2株の低温処理耐性変異株を得た. これらの変異株は, 3〜5回の戻し交雑を行うことにより余分の変異を除いた. 現在, 標準的な変異株との交雑により, 変異のマッピングを行っている. 予備的な結果では, フッ素イオン耐性変異株はX染色体(成長の遅いもの)と第II染色体(正常のもの), 8-アザグアニン耐性変異株は第II染色体, 低温処理耐性変異株は第III染色体に変異を持つと思われる. 変異株および野生株のサイクリックAMPを定量したところ, 乾燥重量1mgあたり約2pmoleであった. 線虫の培養のたびにバラツキがあり, 野生株と変異株の差はこのバラツキより小さかった. 遺伝子クローニングのためには, EMSによる塩基置換変異より, トランスポゾン挿入変異の方が便利である. そこで現在, ミューテーター変異株によりトランスポゾン挿入変異を誘起し, その中から上述の変異株を選択しているところである.
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