研究概要 |
本研究の目的は, 担体に固定化した鋳型DNA(固定化オペロン)を用いて, 基質の大過剰客または急速了過による反応停止と転写複合体分離という新しい手法で, 転写複合体の構造を解析し転写の調節機構を解明することである. そのための第一歩は, 転写の種々の機能を損なわないように, 担体にオペロンを固定化することである. 最もその可能性が高い, ビオチン, アビジン結合を利用した固定化を試み, 成功した. (1)DNAはビオチン・アビジン結合によって末端で固定化できる. 一本鎖5′末を生じる制限酵素断片を, ビオチン化dUTPとDNAポリメラーゼを用いて, ビオチンを含む二本鎖端末に変える最も簡単な方法では, 5-50%と低い固定化率しか得られなかった. そこで, T4DNAポリメラーゼのエクソヌクレアーゼ活性を利用して, 数残基内側のチミジンをラベルした. この方法により, EcoRI端末で, 95%以上の固定化効率を得ることができた. また, 固定化されたDNAは, 末端付近を切断する制限酵素で遊離したことなどから, 固定化効率はビオチンラベル化の効率で決定され, DNAは末端で固定化されていることが明らかになった. (2)固定化による立体障害はほとんどなく優秀な転写の鋳型である. 固定化端末から24塩基体の位置でも切断でき, 固定化による立体障害はほとんどないことが明らかになった. 事実, RNA産物の長さの分布や, それに対するNasAの影響などは, 遊離の鋳型DNAの時に同一であった. (3)鋳型DNAの固定化によって, 緩衝液成分を変えずに転写を停止することができるよにうなった. 大過剰希釈(アクリルアミドビーズ), 急速了過方(アガロース, アクリルアミド共)により, 基質のみを除いて転写の停止をおこなっても, RNA産物の長さの分布は変化せず, 新しい高速反応方が可能になった.
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