研究概要 |
1.最も原始的と思われる酸素担体ヘムエリスリン(シャミセン貝, スジホシモドキ)を用いて, その酸素吸着特性を温度ジャンプ法, ストップトフロー法で追跡し, 速度論的解析を行った. スジホシムシモドキ由来のヘムエリスリンは3量体であるが, 酸素吸着の協同性を示さない. 速度論的解析の結果も各サブユニットが互いに独立に酸素結合するというモデルを支持する. (kon=1.18×10^6M^<-1>・S^<-1>, koff=9.1S^<-1>). 一方シャミセン貝由来のヘムエリスリンは, 協同性を示す. 機能に必要な最小サブユニット数は8で, 実際のサブユニット数と一致する. このヘムエリスリンは, α, βと2種の一次構造の異なるサブユニット各4個ずつから成り, ヘモグロビン様のアロステリック効果を示していることが分る. 速度論的研究は, 温度ジャンプ, ストップトフロー法を用いて行われた. 温度ジャンプ法では一段階の緩和過程しか観測されなかったが, ストップトフロー法では二段階が観測され, そのうち速い過程は温度ジャンプの過程と同じオーダーの速度定数を与えた. ストップトフロー法の結果は, MWCモデルで検討した. 2.阪大・今井と協同して両接類由来のヘモグロビンの酸素吸着特性を調べた. 今後この材料を用いて速度論的解析を行う予定である. 3.スジホシムシ由来のヘムエリスリンが協同性を持たないのに3量体を形成している理由は何かを考察した. 有機水銀でSH基をブロックして, その後の変化を速度論的に調べるという方法により, 同ヘムエリスリンは, 3量体を取ることにより, 少くとも自動酸素性を押えていることを見出した. 4.ヘモシアニンを用いた解離過程の研究, ヘモグロビンの再構成反応についても研究を続けた.
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