最近、高等学校、大学の教育過程において、学生・生徒の 「物理ばなれ」 の現象が次第に顕著になりつつある。この打開策として 「文科のための物理」 とか 「数式を使わない物理」 というキャッチフレーズのもとでの教育改善の試行がいくつも見られるが、それらが物理教育推進のために十分な効果を挙げているとも、またその方向が唯一のものとも思われない。その意味で、現行の高等学校の数学の教科書における物理の学習内容と物理の教科書における数学に関係する学習内容を調べ、互いの関係を明らかにし、その結果もっと積極的に、物理において微積をはじめとする数学の内容を取り入れた教材を用いるべきだと考えた。 また、コンピュータが現在の社会生活の、いずれの分野においてもその分野の進歩発展と深くかかわりを持つにつれて、数学的思考の有用性やその学習の必要性の認識は急速に深まってきている。そこで、物理の中で微分や積分の考え方を意識的にもたせるための工夫として、作業学習教材による工夫、コンピュータのシミレーション教材による工夫、数式上による工夫を検討し教材を開発した。このなかには、自作のソフトのほかに、表計算やグラフ作成用などの市販のソフトウェアを有効に利用することも考えている。また、現象の理解において、数学的処理による精密な理論的理解を求めることにより、かえってその本質に直線的にせまりたいと思う。 CAI教材としては、物理の問題を解決するときに必要な、多段階的技法群を明確にし、これを用いメニュー形式で技法を選択し、個別学習を行う方式を開発し、7本のソフトウェアを作成し、高等学校で試行を行った。これは解法技法を学ぶためのCAIで、このなかで情報処理活動や数学的処理、モデルの携繁、吟味、極限や近〓など数学的考え方をはじめ多角的に一つの問題を処理する手法を用いている。
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