研究概要 |
京都大学共同利用研究施設のMUレーダーを用いて対流圏の風の時系列データを取得し, 梅雨期末期の中間規模擾乱の4次元解析を行うための観測的研究を行なった. しかしながら, 本年はエルニーニョの影響から空梅雨であり, 予定していた観測期間中には, 降水現象及び中間規模現象は全く発生せず, 梅雨末期の中間規模擾乱を解析するという当初の目的は到成出来なかった. しかし, 時間的に連続したMUレーダーのデータにより, 種々の大気中のメソスケールの現象の解析を行うことが出来た. とりわけ, クラウド・フィンガーと呼ばれる雲システムが, 7月10日に信楽上空を通過したのだがその構造を現在解析しているところである. このようなメソスケールの現象の運動場の解析は少なく, 興味深いデータが得られたと言って良い. 更に, MUレーダーを用いたメソスケール現象の4次元解析については, 前回行なった62年2月17日の南岸低気圧の際のデータを用いて研究した. 直接メソモデルを用いて4次元解析を行う前に, まず時空変控法を用い23次元解析を試みた. つまり, MUで得られたデータを低気圧の移動速度から時空開変控し, 空間的に九州から関東に及ぶ構断的なデータと考え, 140°E, 135°E, 130°Eの各種断面図と併わせ立体解析を行なった. 時空開変控されデータは130°E, 140°Eの断面図と比較してみると整合性が良く, この解明の妥当性を示している. 数値モデルを用いれば, この時空開変控がもっと系統的に行なわれることになり, メリスケール現象の解析にとって有用な方法となると思われる. 更に, 低気圧の降水系に伴なうと思われる前線面の行動が見い出されたことも付け加えておきたい.
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