研究概要 |
研究は次の3点につき行った. 1.斜面の基盤構造と樹木根系の伸長様式の分類およびそれをもとにした鉛直根の力学的強度〓強;評価:斜面の基盤構造は, イ)硬質基盤で根の伸長を許さず, 水平根の効果のみが期待される斜面, ロ)亀裂の多い基岩で鉛直根の効果が大きい斜面, ハ)根の伸長を許さない下層基盤の上に伸長が抑制される遷移層のある斜面, ニ)深い表層土をもち鉛直根の効果が期待できない斜面, の千種に分類した. これらに無限長斜面の安定式を適用して鉛直根の効果を評価した. 樹木の伐採, 根の腐朽により最も崩壊発生危険度の大きい斜面は, ヘ)の遷移層をもつタイプの斜面であることを指摘した. 花崗岩マサ土や固結度の低い新第三紀層斜面がこれにあたり, これらの斜面では統計的にも森林伐採により表層崩壊が多発することが分っている. 2.水平根の分布を推定するためのシュミレーションモデル: スギ人工林を例にとり, 地上部の立木の配列法則をもとにモデルの作製を行った. 地下部の根量を鉛直根と水平根に分け, 根束の指数関数的逓減則と樹根の分岐則を用いて根の数と平均直径および根の引抜抵抗力を推定することを試みた. 樹木の中間位置で根の引抜抵抗力が最小値を示すことを証明した. 3.上界定理を用いた樹木根系の斜面強度補強の評価: 上界定理により水平根と鉛直根の両方の効果を導入した斜面安全率の計算を行い, 水平根と鉛直根の斜面安定への寄与度を分離して評価することを行った. 比較的薄い表層土をもつ斜面においては鉛直根の効果が大きく斜面安定に寄与していることが評価できた. 現実の斜面において森林伐採の影響を最小にする伐採方式を検討することは将来の問題として残された.
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