研究概要 |
1要因別採点法による斜面の安定性評価方法は多くの機関で採用されているが, その元となる多変量解析に用いたアイテムもカテゴリー区分も, 各機関まちまちである. 従って点数制の評価法を横ならびにしてみると, 夫々類似のアイテムを使いながら, 皆独自のものになっている. 之等の評価法のうち入手できたもの10ケースについて相互の比較を試みた. 自然斜面について云えば, 他形に関するアイテム, とりわけ平均勾配, ついで斜面の縦断面・横断面形状と斜面上部の平担面等が崩壊の発生に重要な要素であり, 植生も崩壊に対する寄与率が高い. 地質は多くのアイテムに対して間接的な要因になるが, 単独なアイテムとしての寄与率は低い. 切土斜面では, 表層の土質, 層厚, 防護工, のり肩状況, 降雨時の湧水の寄与率が高い. 総じてほとんどすべてのケースで全国的な視野から妥当なアイテムが用いられているが, 類似したアイテムでもその重みは地域毎にまちまちである. 之は, 1つには強い地域性の反映であるが, アイテムの具体的な表現方法によって崩壊に対する寄与率が異なってカウントされることにもよる. 2多変量解析では, 崩壊前の不安定化の徴候はほとんどカウントされない. 地すべり性崩壊の多発する中越地方の丘陵で前徴的地形変化を調査した所, 尾根部に多くの割れ目が発見された. 長野市西北方の地附山では, 地すべり後背の小起伏面縁辺に開口割れ目を伴うリニアメントが認められた. しかし不安定化のタイムスケールにはまだ多くの問題を残している. 3崩壊発生の実時間的予測には梢広域の雨域, 雨量, 雨量強度変化の予測が先行しなければならない. この目的で, 栃木県茂木地方の崩壊について, レーダーアメダス雨量合成図を用い, 5×5kmの範囲毎の降雨量の経時変化を求めた所, 崩壊発生時間の予測に十分役立つ情報を提供することがわかった.
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