研究概要 |
地震による物理的被害の要因は多岐にわたり, 地域の特性にも大きく依存する. 従ってその要因を明らかにし, 適切な事前調査法を確立するためには調査地域を限定し, 精査することが得策である. 比較的狭い地域に各種の地盤が存在し, 被害地震の経験も多い小田原市とその周辺地域を調査対象とした. 地震動の予測手法の1つの試みとして, 既存のボーリング資料(約250地点)の収集を行い, 地盤モデル策定のため, 2地点(足柄, 酒向地区)のボーリングを追加した弾性波探査を実施した. 更に小田原市とその周辺地域にわたって地盤の常時微動(150地点)の測定を行い, 地質, 物理探査資料のほか強震記録(小田原地区には現在13地点設置)等を参考にした最適地盤モデルの資料作成を図った. 震害予測にあたっては, 建物の耐震性能の検討が不可欠であり, また上記地震動動予測との調和を確認するため, 実在建物と地盤における同時地震観測を足柄小学校および山王小学校で実施した. 更に足柄平野に数多く点在する学校建築物(鉄筋コンクリート造, 2〜4階建38校)について, 微動観測から固定周期と各種の振動形を求めた. また木造建物については, 小田原駅周辺地域の商店街15棟の固有周期と各種の振動形を求め, また人力による自由振動試験から方法別に減衰定数を求めた. 以上の調査・観測結果から, 学校建物群のRC造については, 比較的狭い範囲に存在する建物でも地盤の違いによって地盤と建物の速成効果に大きな差が生じていることが分かった. 従って将来の地震によって, 学校建物の被害は場所によって大き異なることが予想される.
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