研究概要 |
近年, 流域の都市化に伴う出水の尖鋭化によって, 中小河川の氾濫が頻発する傾向にある. このような洪水氾濫災害を防止・軽減するためには, 洪水氾濫機構を物理的に究明するとともに洪水氾濫の解析法を確立することが急務である. 本研究では, まずはじめに差分法による従来の不定法(一次元)一貯留モデルの機能強化を行った. すなわち, 河道流については不定流の一次元解析を行うものとし, 氾濫域を表す貯留タンクを平面的に接続し氾濫水を連続した状態で取り扱えるようにした. これにより, 氾濫域で氾濫水位が不連続になるなどの問題点が改善され, 解析精度を飛躍的に向上させることができた. しかし, 洪水氾濫機構を物理的に究明して水害危険度の予測法を確立するためには, 更に精緻な解析モデルが望まれる. そこで, 第2段階として, 有限要素法を適用して, 氾濫流を平面的に解析するモデルを開発した. これまで有限要素法では, 大型のマトリックスの逆行列を解くことが前提となっており, 計算コストの上から難点があった. 本モデルでは, 時間微分にかかわる行列を対角行列に集中化するとともに, 時間微分を陽的に展開し, 2step Lax-Wendroff法を用いて解析する手法を採用し, 大型マトリックスの演算を回避している. これにより, 計算量と計算コストの大幅な軽減が可能になり, FEMモデル実用性が高められた. 次に, これらの解析モデルを昭和61年7月豪雨によって内水災害を被った巨椋低平流域及び昭和58年7月山陰豪雨で甚大な被害を被った島根西部の益田川流域に適用し, 氾濫流の動態について吟味したのち, それぞれのモデルの得失について評価した. その結果内水氾濫主体の場合には氾濫水の流速がそれほど大きくないため, 不定流一貯留モデルで十分であるが, 外水氾濫主体の場合には二次元モデルの適用が必要であることが判明した.
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