研究概要 |
本研究においては, まず, 洪水氾濫危険地域を設定する際の洪水規模の設定に関して検討を行い, 対象洪水に対する洪水氾濫範囲の予測システムを, 従来から進めてきた氾濫シミュレーシート手法に改善を加え, 排水路網を考慮したモデルを用いて構築した. 本手法を, 水理模型実験で検証した結果, このモデルで現象がある程度説明できることがわかった. 洪水氾濫現象を精度良くシミュレーシートするには, 河道が格子サイズになる程度の格子を選び, 氾濫原と河道を含んだ一連の計算を行えばよいが, これでは空間差分間隔や時間間隔をかなり細かく採る必要があった. 河道を排水路網にみたてた計算を行うことにより, 若干精度が低下するということには問題が残るが, 空間差分間隔や時間間隔を大きくとることができる. この方法を昭和57年の長崎豪雨災害で被害を受けた中島川の氾濫解析に適用した結果, 災害調査から得られた実測値をかなり説明できることがわかった. 避難システムの設計に関する研究に関しては, 氾濫シミュレーションに基づいた避難のシミュレーションモデルの構築とこれを実行するために必要な種々の情報の処理が重要である. まず, 京都盆地南部の木津川と宇治川で囲まれた旧巨椋池の集水域を対象として, この流域を125m×125mの格子に分割して地形解析を行い, 各メッシュの避難人口の分布や避難経路および小・中学校等を対象とした避難場所の設定など, 避難システムを構築するための基礎データの解析を行った. ついで, これらから形成される避難ネットワークシステムにおいて避難のシミュレーションモデルを構築した. 現在, このモデルを用いて洪水氾濫シミュレーションに基づいた避難のシミュレーションを実行している段階であり, モデルの修正等もまだ必要で, さらに研究を進めているところである.
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