研究概要 |
わが国では梅雨末期の豪雨によって, 急傾斜地の崩壊が多発し, 多くの人命が失われ, 家屋や構造物の被害が著しい. 本研究では, 地盤災害の発生を予測する方法として10分間の雨量データベースを用いてTalbotの極値雨量曲線RT=a/(T+b)の特性値, a, bを求め, これらの豪雨時の10分ごとの振舞いから豪雨を予知し, ひいては地盤災害の発生の予知を試みた. この方法を昭和47年中国地方豪雨災害をはじめ計8件の既往の豪雨災害に適用して, その有効性を確かめた. すなわち計32点における豪雨時のアメダスなどの降雨記録を収集し, 解析した. 解析したデータ数は52例で, その中の34例でこの方法の有効性が確認され, 最も短い場合は10分前に最長で約6時間前に災害の発生の予知が可能との結果が得られた. ただし, 地盤災害の発生には10分間雨量だけではなく, 累積雨量も深く係わることが, 災害発生時の日雨量と累積雨量の関係をしらべた結果からもわかった. このことは本研究で用いた予測手法にも累積雨量の考察が必要であることを示すもので, この点については現在検討中である. より多くの結果を集積し, 災害発生に必要な累積雨量の限界量などを判断する必要がある. また, これまでの研究結果から豪雨による地盤災害発生予測には, 地盤中の間隙水圧も重要な因子であることがわかっているので, 62年度では雨量, 地下水位, 地盤変位を観測中の危険予想地点3か所の中の1か所で間隙水圧の測定を行い, 間隙水圧と地下水位との関係を確認した. これは間隙水圧の常時観測には多大の費用がかかるので, これを地下水位でかえ得るかを見るためである. 間隙水圧では埋設後の異常な水圧, 上昇が約50日続いたが, それ以後は地下水位からの換算値と間隙水圧値はよく一致することがわかり, 間隙水圧の測定と地下水位の測定は等価であるとの結論を得た.
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