研究概要 |
多摩川の中下流部, 河口部, 東京湾内湾において, 水温, 塩分, 電気伝導度, 流速, 水中照度などを測定するとともに, 試水を採取してSS, DO, 有機炭素及び無機栄養塩類(N, P, Si化合物など)を分析し, 植物プランクトンの現存量(クロロフィルa__-量)と光合成活性の測定を行った. 多摩川大橋から河口までの7測点での調査の結果, 上げ潮時と下げ潮時いずれの場合も下層にはかなり上流まで高塩分の内湾水が入ってきていることが明らかになった. 川の水は多量の懸濁物を含み, 著しく濁っており, 水中照度の減衰は極めて急激であった. 無機窒素の中でアンモニア態窒素が最も多く, 下げ潮時には上流より下流で濃度が高く, 河口で最大であった. 反応性リン及びケイ酸態ケイ素は上流で濃度が高く, 河口に向って減少した. 水中のクロロフィルa__-濃度は, 鉛直的に著しい差異はなく, 8月の下げ潮時は河口より上流の方でやや高めであったが, 上げ潮時は上流の表層で下層よりかなり高くなっていることがわかった. 9月の結果を8月と比較すると, 河口でやや高めであるのに対し, 多摩川大橋では著しく低かった. また12月には河口では低く, 多摩川大橋では比較的高い値を示した. クロロフィルa__-量あたりの光合成速度は河口の植物プランクトンで比較的高く, 河川水については多摩川大橋のものでやや高めであったものの, 大師橋及び六郷橋のものとは大きな差はなく, 河口のものと比べると活性はかなり低かった. また, 河口の試料と多摩川大橋の試料について, 塩分を変えて光飽和光合成活性の変化を検討した結果, 河口の植物プランクトンの光合成活性は塩分の低下に伴ってゆるやかに低下するが, 河川水の植物プランクトンの光合成活性と塩分の上昇に伴ってかなり急激に低下することが明らかになった. これは, 河口域の植物プランクトンが広塩性であることを示唆するものである.
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