研究概要 |
1.光合成膜の重金属イオン透過性の定量 詳細な定量化には至らなかったが, 下記の3.(2)の結果より透過速度がHg^<2+>>Cd^<2+>と推定された. 2.重金属の枯草効果の評価 培養液にHg^<2+>を添加して高等植物を栽培する実験により, 枯葉効果が添加濃度に依存して現れることを確認した. 3.重金属イオンによる光合成色素類の分解促進および立体異性化促進作用に関する計測 (1)in vitro実験 有機溶媒または水性アセトン中におけるクロロフィルaおよびbの分子変性を, 各種外来物質共存下で高速液体クロマトグラフィーにより詳細に検討した. エピマー化(立体異性化)に関しては, 従来全く報告のない一連の速度定数を実測し, その機構を明らかにできた. Hg^<2+>, Cd^<2+>など重金属イオンがクロロフィルム類のフェオフィチン化(中心金属脱離)を著しく促進することを初めて見出し, その開始機構が中心金属置換であることを分光学的測定によって確認した. (2)in vivo実験 生葉から葉緑体(クロロプラスト)を調製し, これを重金属塩を含む水に懸濁させて, 一定時間後の光合成色素組成εHPLCにより計測した. Hg^<2+>やCd^<2+>, AG^+などの重金属イオンがクロロフィル類のフェオフィチン化ε促進することを見出し, その機構が上記(a)の場合と同様, 中心金属置換であることを明らかにした. 変性促進作用の序列はHg^<2+>>Cd^<2+>>AG^+であった. 本年度の研究において得られた上記の新知見をもとに, 今後は, 重金属イオンによる色素変性促進現象と光合成機能阻害効果との相関性を確立すべく研究を進めることが不可欠である.
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