研究概要 |
天然界には環境上有害な多種多様な含ハロゲン有機酸が存在する. キブラールという植物やある種の放線菌は猛毒のモノフルオロ酢酸を合成するほか, 毒キノコにも各種の有毒含ハロゲン有機酸を合成するものが多い. 例えば, 猛毒キノコであるコテングタケモドキには, 2-アミノー4-クロロー4-ペンテン酸(ACP)が高濃度に蓄積されている. 本研究では有害な含ハロゲン有機酸の1つのモデルとしてACPを取り上げ, その抗菌作用を明らかにすると共に, 微生物分解の機構を酵素レベルで解明することを目的としている. L-ACPは各種の細菌に対して抗菌剤として作用する. 6.7mMのL-ACPの添加によって供試菌株は全て完全に生育阻害を受けた. 細菌の中にはACPを分解するものがあり, 特にProteusmirabilisに強い分解活性が見いだされた. 本菌の粗抽出液をL-ACPと共にインキュベートすると, L-ACPが分解し, 等モルの塩素イオン, アンモニア並びに2-ケトー4-ペンテン酸が生成した. 酸素非存在下においても反応は進行し, また, 酸素存在下でも過酸化水素は生成しない. 従って, 本反応にはアミノ酸酸化酵素以外の何らかの新酵素が関与していると考えられる. しかし, ACPはアミノ酸オキシダーゼの良好な基質であり, この場合には, 1モルの酸素及びACPから, 等モルの塩素イオン, アンモニア, 2-ケトー4-ペンテン酸及び過酸化水素が生成する. 本反応を解析した結果, ACPが酸化してα-ケト酸に転換し, その後, さらに, 分解して塩素イオンが生成すると推論された.
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