研究概要 |
香川医科大学屋上にて毎月一定期間毎に, 直径10μm以下の大気中粒子状物質を捕集・調査し, 次の結果を得た. (1)捕集粒子状物質量は20〜80μg/m^3Benzo(a)pyrene量は0.01〜1.89ng/m^3であった. (2)変異原性をAmes法で測定すると, 抽出物1mgあたり510〜4050His^*, 大気1m^3あたり4.2〜52.9His^*であった. (3)4, 7, 10, 1月の粗抽出物をdiethyl ether溶性の中性・酸性・塩基性画分に分画してその変異原性を測定すると, 酸性画分に分画される変異原物質の組成の変動は少ないが, 中性・塩基性画分に分画される変異原物質の組成は大きく変動していた. (4)中性画分に分画され, 高い変異原性を示す1-nitropyrene(1-NP)を定量すると, 大気1m^3あたり4.5〜155pg, 粗抽出物1mgあたり0.43〜19.6ng, 中性画分1mgあたり2.6〜79.9ngであった. 粗抽出物と中性画分のTA98(-)S9での変異原性に対する1-NPの寄与率(1.69His^*/ngの変異原性として計算)は, それぞれ0.05〜0.99%, 0.06〜1.76%であり, 寄与率は低かった. (5)1月の中性画分試料中に, 我々がディーゼル排出粒子状物質中に分離・同定・定量した高変異原性(1-NPの約32倍の変異原性)の1-nitro-3-acetoxypyreneの存在を認めた. 1-nitro-3-acetoxypyrene量を測定すると粗抽出物, 中性画分それぞれに1.67, 6.3ng/mg含まれており, 変異原性への寄与率(54.8His^*/ngの変異原性として計算)はそれぞれ2.7, 4.9%であり, 1-NPの約2.7倍の寄与率を示した. また, 1-NP, 1-nitro-3-acetoxypyrene, 両者の粗抽出物1mgあたりの量は, 我々が報告したディーゼル排出粒子粗抽出物1mgあたりの約30%の濃度であった. (6)1-nitro-3-acetoxypyreneが生体内に取り込まれた場合の生体内運命を知る手がかりとして, in vitroで, S9Mixによる代謝を調べた. 液クロの溶出時間および質量分析の計算, 主たる生成物は1-nitro-3-hydroxypyreneであった.
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