研究概要 |
200海里時代をむかえ沿岸海域における栽培漁業の重要性はますます増大してきているが, 養殖場は密殖によると思われる赤潮も魚病の発生に悩まされて, その漁場価値を低下しつつある. 本研究の目的は愛媛県南部, 宇和島湾のハマチ養殖場で過去3年間行ってきた環境調査結果をもとにして, 養殖場の物質環境を精度良く再現できる数値生態モデルを作製して, 赤潮や魚病の発生しない養殖場の環境を保持するための最適ハマチ養殖密度, 投餌量を明らかにすることである. 本年度は昭和59〜61年度地元漁協の依頼で行った環境調査結果(水温, 塩分, 流向, 流速, 溶存酵素, NH_4, No_2, No_3, PO_4, OC, べントスの季節変動)を整理してデータベースを作製した. そしてこのデータベースをもとにして宇和島湾のハマチ養殖場の有機炭素(OC)と溶存酵素量の季節変動が再現できるような数値生態モデルを作製した. この数値生態モデルで計算された有機炭素の沈降量の季節変動はセディメント・トラップ実験により得られた現場観測値をよく再現しており, このモデルの有用性がまず実証された. このモデルで得られた有機炭素沈降量の50%以上は残餌で占められており, 今後餌を与える量を少なくすべきことが示唆される. 得られた観測・計算結果をもとに現地漁民と議論を行って, 様々な養殖密度, 技餌量に関する数値実験をくり返し, 宇和島湾のハマチ養殖場における最適養殖密度, 最適技餌量を明らかにし, さらに今後の沿岸海域における養殖場の在り方を明らかにしていく予定である.
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