研究概要 |
8種類の化学物質(塩化カドミウム, 硫酸カドミウム, 亜セレン酸ナトリウム, 塩化リチウム, 炭酸リチウム, ビタミンC, トリパンブルー, アマランス)のアフリカツメガエルの胚および幼生に及ぼす影響を検索した. 検査した物質の全てに何らかの発生障害が観察された. 発生障害を引き起こした最小曝露濃度はそれぞれ1, 1, 10, 10, 10, 250, 500, 2500mg/lであった. トリパンブルーとアマランスについては今回の曝露濃度では致死作用が主で, 催奇形性は示されなかったが, 濃度をより細分すれば奇形を引きおこす濃度は求められると考えられる. 他の物質については致死と異常が濃度に対応して出現した. カドミウム, リチウム, セレンについては, 以前に検索した鉛,水銀と同様, 低い濃度で発生障害が出現し, 金属による発生障害の検索の重要性が示唆された. 中でも鉛, 水銀, カドミウムの重金属で特に低い濃度で発生障害が出現したことは, 重金属の生体影響の強さを示しているものと考えられる. カドミウムとリチウムについてはそれぞれ2種の塩について検索を行ったが, 発生障害を引き起こした最小曝露濃度および出現した異常の型はそれぞれの2種の塩で同様であり, その作用がカドミウムあるいはリチウムによるものであることが支持された. 出現した主な異常はカドミウムでは腹部や尾部の多数の小さな水腫, リチウムとセレンではほぼ同じ型の異常が出現し, 波状の背ビレを伴う体軸の屈曲異常と頭尾長の短縮および水腫であった. 哺乳類で催奇形性がないとされているアマランスについては25g/lと非常に高い濃度でのみ発生障害が出現し, むしろ非特異的反応であると考えられる. 一方, ビタミンCでは250mg/lとかなり低い濃度で異常が出現し, その作用機序に関する検討が必要であることが示唆された. これらの結果は環境化学物質の発生毒性検索系の1つとして, 本研究を用いる方法の有用性を支持している.
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