研究概要 |
本研究では, 将来のアモルファスト太陽太池の宇宙空間等における利用を考えた場合に予想される, 高エネルギーフォトン照射による劣化現象を調べ, その光劣化原因を究明すること, さらに劣化対策への指針を得ることを目的としている. 先ず, GD(グロー放電分解)法により作製した水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)pin構造太陽電池を作製し, 真空紫外光から軟X線の短波長光を多く含むシンクロトロン放射(SR)光の照射を行った. その結果, 同程度のパワーの可視光照射の場合と比較して, 極めて短時間に, 光起電力特性や電流電圧特性に大きな劣化を生じることがわかった. また, これらの劣化は, 100°C程度の低温アニールにより, ほぼ回復した. 次に, GDa-Si:H膜にSR光を照射し, その電気的・光学的特性の変化を調べた. この場合も, 暗・光伝導やフォトルミネッセンス強度に急速な劣化を生じ, 同程度のパワーの可視光照射時と比較して約千分の一の時間で同じ劣化を生じた. しかし, どちらの光によっても劣化の傾向やアニールによる回復特性はほぼ同じであり, 劣化原因が, 光誘起キャリアの再結合により生じる欠陥であるとしたモデルでこれらの傾向をほぼ説明できた. 一方, ジシランガスを熱分解させることにより作製したa-Si:H膜はSR光, 可視光どちらの照射に対してもほとんど劣化を生じなかった. そこで, 熱分解法によりPin太陽電池を作製したところ, 現状では成長条件が最適でないため効率は高くないが, 少なくとも可視光照射に対して劣化が極めて小さく安定な素子が得られた. 以上より, Gt)a-Si:H膜にSR光を照射することその特性に速い劣化を生じるが, 劣化機構は可視光の場合と同様と推定された. 劣化対策として, 熱分解による膜作製が考えられた.
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