研究概要 |
ノルボルナジェン類とクワドリシクラン類との原子価異性を利用した水系での太陽エネルギーの貯蔵・変換システムの実用化のために, 変換・貯蔵効率の更なる増大を目指して, (1)銀(I)による解媒異性化反応機構の解明(2)高活性な不溶性解媒の調製(3)新たな水系システムの開発を行った. (1)銀(I)触媒による水溶性クワドリシクラン類のノルボルナジェン類への水中での発熱異性化反応を詳細に検討し, コバルト(II)ポルフィリン錯体を触媒にしたときに異性化速度が著しく小さいクワドリシクラン類に対して, 銀(I)触媒が特に有効に働くことが判り, 銀(I)塩がコバルトポルフィリン錯体の相補的な触媒として用いられることが判明した. また, その反応機構を解明し, 銀(I)塩触媒が有効に利用できる範囲も明確にした. (2)有機溶媒中におけるクワドリシクラン類のノルボルナジェン類への発熱異性化反応を, 種々の可溶性触媒で検討し, 高活性なるものを探究した. その中で特に高活性な触媒を, 水に不溶な担体上に吸着させて, 水に不溶な固定化触媒を調製した. このような不溶性触媒による水中でのクワドリシクラン類のノルボルナジェン類への発熱異性化速度を測定し, 触媒の活性・安定性について検討を行い, 担体と錯体触媒とのよい組合せを明らかにした. (3)アルカリを含まない水のみそ溶媒とする水系システムの開発のために種々の系を検討した結果, 分子内にアミノ基とカルボキシル基の両者を有する誘導体が可逆性並びに安定性に優れ, しかも水に対する溶解度も著しく増大して単位容積当りのエネルギー貯蔵量が増し, 太陽エネルギー貯蔵にとって大変有望であることが判明した.
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