研究概要 |
本研究は, 地下蓄採熱方式を有するヒートポンプ暖冷房システムの性能を左右する土壌と埋設管の伝熱特性をパイロット実験と解析の両面から考察したものである. パイロット実験は, 長さ20m, 口径50mmの垂直埋設管を用い連続採熱実験と蓄採熱実験の2種類について行った. 採熱期間の管内入口温度は0°C, 蓄熱期間は30°Cである. 一方, 解析は, 気温変化を考慮した3次元有限円筒モデルの差分法による蓄採熱量および土壌温度のシミュレーションを行った. また, 2次元円筒モデルによる解析を併せて行った. 結果の要約は次のとおりである. (1)採熱実験における4カ月後の採熱量は約90Kcal, 蓄採熱実験における3.5カ月後の放熱量は約350Kcalである. 両者の比率は, ブライン温度と自然土壌温度(約9°C)の差の比率よりも大きい. (2)蓄採熱実験における3.5カ月後の採熱量は約150Kcalと大きくなっている. (3)熱伝導率の実測値と管近傍の土壌の温度勾配から求めた伝熱量は, ブラインの出入口条件から求めた畜採熱量にほぼ一致する. (4)土壌の温度は, 管近傍60cm半径内で急激な勾配をもっている. したがって, 管近傍の土の熱伝導率を高める方策を講ずれば, 熱特性は改善される. (5)畜採熱量と土壌温度の経時変化に関するシミュレーション結果は, 実験結果と非常に良く一致した. このことは, 実測に基づく熱物性値を用いた顕熱伝熱計算から, 現象の予測が可能であることを示唆している. ただし, 採熱量に関するシミュレーション結果は, 実験結果と一致しなかった. このことは, 0°C付近の氷の生成が関与していると思われる. (6)2次元円筒モデルによる解析結果は, 畜採熱の実験結果とシュミレーション結果に一致する. 少なくとも20m以上の垂直管においては, 2次元円筒モデルが適用可能であるといえる.
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