研究概要 |
高温固体電解質燃料電池は, 作動温度が高いため熱効率が高いだけでなく高価な白金触媒が不要であり, より広範な燃料ガスの使用が可能である. しかしながら電解質の固定化にともなって電極の有効反応面積が少なくなることが問題となる. これは電極材に電子-イオン混合導電性を賦与することにより解決出来そうであるが, そのためには電極材に添加物を加える必要がある. ところが,このような添加物は一般に電解質との固相反応を促進し電解質を変質させるおそれがある. 本研究は高温電池の高効率化を目指して, イットリア安定化ジルコニアを電解質とし, 電極材としてLaFeO_3を用いた高温空気極の分極特性に与える添加物の効果を調べようとしたものである. LaFeO_3にSrOを添加すると電子-イオン混合導電性となり, 電子導電率だけでなく酸素イオン導電率が著しく増大した. 混合導電性電極は電極バルク中での電極反応を可能にし, 電極の有効反応面積を拡大するため分極特性が著しく改善されるものと期待されたが, 結果は予想に反して, SrOの添加によって電極特性は悪くなった. その原因を明らかにするため電極-電解質界面を分析したところ, 添加物のSrOと電解質のZrOが固相反応し, SrZrO_3が生成していることが分った. SrZrO_3の導電率はZrO_2電解質に比べて1〜2桁小さく, このことが電極反応の円滑な進行を妨げているものと思われる. そこで分極特性を改善するにはSrZrO_3の生成を少なくすることが必要となったが, それには電極の焼きつけ温度を下げることが望まれた. ところが電極材の粉末粒度が粗いと電解質上への焼きつけに高温を要し, SrZrO_3の生成が避け難いことが分った. そこで共沈法によりLaFeO_3の微粉を作製し, これを用いて焼つけを行ったところ1000°Cまで焼きつけ温度を下げることが出来た. かくして得られた高温空気極は従来法による電極に比べ性能が著しく向上し, 高効率の高温空気極となることが分った.
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