研究概要 |
実規模ソーラポンドの集熱, 蓄熱および熱抽出などの稼動特性およびソーラポンド・ヒートポンプシステムの要素およびシステム性能を把握するための実験, ならびにそれに基づく性能の解析および予測の研究が行われた. 1.昭和62年度は, ソーラポンド本体の性能測定が塩水充填後1年半(S60, 7〜61, 12)にわたって行われ, 各塩水層温度および濃度, 外気温度, 日射量, 蓄熱量, 熱抽出量, および集熱効率などが測定, 算出された. 完成初期の7〜9月の蓄熱層温度の上昇速度および到達最高温度は70°Cと高いが, その後は熱抽出とポンド水汚染のために低下し, 11月から翌年4月までは表面が結氷した. 2年目は5〜7月の温度上昇および最高温度はポンド水汚染の進行と, 6月以降の熱抽出の影響で高くなかった. 集熱効率は月平均値で夏に30%を超えることがあったが, おおむね10〜20%で冬には負の大きな値となった. 救出熱量は前月日射量の10〜13%で, 各年末の蓄熱量は熱抽出量を含めて外気温度規準で560〜660GJ程度で, またソーラポンド性能を維持するための最大の要因はポンド塩水の透明度の維持にあることが判明した. 2.数学モデルを適用してソーラポンド性能の予測のための熱収支計算を行った. 入熱は日射量, 出熱はポンド表面からの対流熱伝達と蒸発潜熱, 各塩水層からのポンド側面と底面への熱伝達からなり, 上部混合層, 濃度勾配層, 蓄熱層における熱平衡式から各熱量と各層温度が算出され, 実測値との比較が行われた. ポンド水中への入射日射量の計算には, 本研究室における塩水の分光透過率値と水平面全日射量の時間値が用いられ, 日射特性としてBirdのスペクトル分布モデルが適用された. その結果, 蓄熱層温度の計算値と実測値は, 塩水の透過率および熱抽出量に適切な値を与えることによりよく一致することが明らかとなり, 今後このポンドモデルと計算法を用いてソーラポンド性能の予測を行う.
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