研究概要 |
本研究では, 炭化ケイ素セラミックスの耐熱性・耐食性を生かし, 高温で使用可能な熱電変換材料としての諸特性を最大限利用することを目的としている. 今年度の研究により, 多孔質化したSiCセラミックスが従来の熱電変換材料に比較して, 性能指数が約1〜2桁小さいもののその高温特性は十分優れていることを見出した. すなわち, 多孔質化によって熱伝導率は緻密セラミックスの約1/10〜1/100に低減されること, 導電率は単結晶の値に比べて遜色のないこと, ゼーベックス係数の絶対値が温度上昇にともなって増加することを見出し, 高温におけるエネルギー変換効率の大きい材料であることを示した. このゼーベック係数の温度依存性の特異性は, フォノンドラッグ効果を考慮した詳細な理論解析によって良く説明することができた. この解析より, 粒子表面, 粒界, 積層欠陥等によって散乱される音響フォノンが電子を引きずるために見かけ上のゼーベック係数が大きくなることが判明し多孔質微細構造の制御が材料開発の上で重要な鍵を握っていることを指摘した. さらに, 微細構造制御のためのブリカーサー材料として中空状SiC微粒子が有効であるとの観点から, 気相反応(CVD)法によってシランーメタンー水素系からの中空状微粒子生成反応の検討を行った. 合成粉末の組成, 粒子サイズなどは, 反応温度, ガス組成, 全流量などによって変化することを明らかにした. Siリッチ組成の粉末では, 過剰のSiが若干β-SiCに固溶するが残りは未反応のまま粒子のコア部分に残存すること, Cリッチ組成の粉末では粒子はほぼ全て中空状となっているが, 過剰のCはβ-SiCには固溶せず, 中空粒子の殻中にアモルファス相として散在すること等を, X線回析, 透過型電顕観察, 赤外吸収分析などによって確認することができた. これらの粉末に適当な助剤を加えて焼結することにより, 多孔質微細構造の制御が今後可能になるという感触を得た.
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