研究概要 |
研究目的:昨年度までの研究において針葉樹樹皮を硝酸のホルマリン処理をすることによって, 海水中のウランの吸着剤を製造しうることが明らかになった. しかし, 2のようにして作った吸着剤は樹皮中に含有されている炭水化物や, 硝酸処理による窒素富化のため, 海水中で腐敗して長期の使用に耐えない. 樹皮中の成分中ウラン吸着に有効な成分を分離して, これをもつて吸着剤を製造すれば, 腐敗に対する抵抗性と同時に吸着能もまたもとの樹皮よりもはるかに向上するのではないかと期待して本研究を行った. 研究成果:樹皮はスギ及びシベリヤカラマツの樹皮を用いた. 樹皮はエーテル, エタノール, 熱1%カセイソーダで順次に抽出された. このようにしてえた分別抽出物のうち, エーテル抽出物は, その構成成分よりウランの吸着能はないと考えられるので, 低分子量のフェノール誘導体の混合物であるエタノール抽出分, および, ポリフェノール酸よりなるNaOH抽出分について, それぞれジアゾ化ポリスチレンに固定化, ウランの吸着能を比較した. 対照として, 硝酸-ホルマリン処理樹皮及び抽出残渣の吸着能とも比較した. 結果は予期に反し, 硝酸-ホルマリン処理樹皮の吸着能が一番優れていた. 一方, 固定化エタノール抽出分, 固定化NaOH抽出分, 抽出残渣の吸着能は, 三者共ほとんど同じ値を示した. 以上のことより, 樹皮の抽出成分を固定化して吸着剤を製造する試みは, 吸着能の向上をもたらさないことと, 製造コストの必然的な上昇とから, 効果がないと結論できる.
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