研究概要 |
本年度は, 原子線スパッタITO膜の堆積条件を最適化し, これらの膜をInP基板上に堆積して製作した太陽電池の光電変換特性を調べた. SnO_2を0〜10wt%含むIn_2O_3ターゲットを用いてITO膜を堆積した. ターゲットの組成に係わらず, 基板温度が約200°C以上のときには多結晶膜が堆積し, また, 基板温度がそれ以下のときにはアモルファス膜が堆積した. SnO_2を5〜7.5wt%含むターゲットをもちいたとき, 約300°Cに加熱した基板上に, 最低の抵抗率(ρ=2.5×10^<-4>Ωcm)を示し可視光の透過率が80%以上の良好な透明導電膜が得られた. 非加熱の基板上に堆積したITO膜は抵抗率がやや高い(ρ△SYsimeq△1×10^<-3>Ωcm)が, 可視光の透過率が60〜90%であり, 耐熱性のない基板に堆積する透明導電膜として有用であると考えられる. CdOとSnO_2とを2.5:1または3:1に混合したターゲットを用いて基板温度100〜200°Cで堆積したとき, 抵抗率が最低(ρ=1×10^<-3>Ωcm)で, 可視光の透過率が80%以上の透明導電膜が得られた. 化学量論組成(CdO:SnO_2=2:1)のターゲットからスパッタされた膜の抵抗率は比較的高い. X線回折の結果から, これらの膜はアモルファス状であった. 加熱しない基板上に堆積した膜および基板温度300°C以上で堆積した膜は高い抵抗率を示した. 上記透明導電膜をInP基板上に堆積してヘテロ接合セルを製作した. 基板を加熱せずに製作したITO/InPセルおよび基板を150°Cに加熱して製作したCTO/InPセルではpnホモ接合形のスペクトル応答が, また, 基板温度約300°CでITO膜を堆積したセルではヘテロ接合形のスペクトル応答が観察された. これは, 適切な基板加熱を行うことによって良好な接合界面がえられることを示す. AM1.5照射下での変換効率は, 基板温度300°CのITO/InPセルでは約13%, 基板加熱をせずにITO膜を堆積したセルおよび基板温度150°CのCTO/InPセルは約8%であった.
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