研究概要 |
超電導変圧器の電気絶縁方式として, 筆者らが独自に考えている高分子固体絶縁方式の利点と問題点を検討するとともに最近の高温超電導体に関するめざましい研究成果を考慮して, 液体窒素冷却変圧器の基礎的設計と実験を独自の内部強制冷却固体絶縁方式を中心に行った結果以下のような成果を得た. 1.従来の油入変圧器の巻線をそのまま液体窒素に全面浸漬して冷却すれば巻線の電気抵抗は常温の1/8となり, 常温の定格電流の5倍程度までは安定に通電できる. 2.気泡が発生すると冷却能率が落ちるばかりではなく, 高電解部分に多量の気泡が溜ると電気絶縁に悪影響を及ぼすことも考えられる. それを抑制するためには液体窒素を過冷却にする必要がある. 3.鉄心を冷却すると, 起動時に大きな熱容量を冷却しなければならず, 運転中は鉄損による冷媒損失もあるので, 鉄心は冷却しない方が望ましい. そのためには鉄心と巻線の間を断熱せねばならず複雑な容器構造となる. 4.気泡問題を抜本的に解決する方法として, 内部冷却中空導体巻線に固体電気絶縁を施し中空導体内部に液体窒素を流通させることにより冷却を行い, 電気絶縁から冷媒流体を分離させる方式が優れている. ここで, 高分子固体電気絶縁材料の低温における熱応力によるクラック発生は防止しなければならない. 5.内部冷却コイルの通電試験を行ったところ, 熱暴走が開始する条件として, 全発熱量が全液体窒素流量の蒸発潜熱を上回り, 液体窒素噴霧流が消失し気体流のみの領域が発生することがわかった. 6.実用的な液体窒素温度超電導巻線が開発されれば, 直ちに変圧器設計に生かされるであろう.
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