研究概要 |
本研究は, 異なった禁制帯幅を持つ異種半導体のヘテロ接合を用いて, 光によって励起生成されたキャリヤを閉じ込めて高効率で電流を取り出せる新構造太陽電池を設計・製作することを目的としている. 本年度は, 動作性能の理論的検討ならびにヘテロ接合の形成と評価に重点をおいて研究を進めた. 得られた成果は次の通りである. 1.[新構造太陽電池の変換効率の理論的検討] 素子構造を一次元モデルで近似し, 変換効率の理論的検討を行なった. 0.1〜10Ωcmの抵抗率のシリコン基板を用いた場合, セル厚を薄くすることにより光照射時短絡電流密度が増加し, 最適厚では従来型のセルより大きな値を得られることが分った. 暗時逆方向飽和電流密度を表面再結合効果を考慮して求めた. セルの変換効率は, 最大21%(AM1.5, 100mW/cm^2)が達成できる. 2.[シリコン上の異種半導体ヘテロ接合の形成と界面評価] シリコン上に広禁制帯幅半導体としてアモルファスシリコンカーボン(禁制帯幅2.3〜4.0eV)をグロー放電法を用いて製作した. 容量一電圧特性より求めたシリコンカーボンとp-Siとの界面準位密度はカーボン組成の増加とともに減少し, 最小5×10^<11>cm^<-2>eV^<-1>の良好な界面を形成することが分った. 光化学気相堆積法により製作した窒化シリコンもn-Siと良質の界面を持つことを示し, 良好なヘテロ接合の形成技術を確立した. 3.[キャリヤ閉じ込め効果の確認] 光誘起電流法により求めた実効拡散長は表面電位障壁層の存在により2倍以上増加した. これは, 電位障壁によりキャリヤが閉じ込められ表面再結合の影響が低減されたためであると考えられる. 以上の結果を基にして, セルを試作し光電変換効率の分光特性を評価したところ, キャリヤ閉じ込めによる短波長感度の増加が得られ, 新構造太陽電池の動作が確認された. 今後, 構造の最適化により効率改善を図る.
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