研究概要 |
アカマフ及びブナより構造の異なる磨砕リグニン(MWL)を調整し, 炭素ガスレーザーを照射した. 照射物よりメタノールを用いて低分子化されたリグニンの抽出を試みた結果, 照射速度が0.6〜4.4m/分の範囲では, 遅ければ遅い程, かつ出力が31〜55Wの範囲では, 高ければ高い程低分子化物の量が増大することを見出した. また, メタノール可溶物の量はデフォーカス値が3〜6cmの範囲で最低となり, この範囲外では増大することもわかった. アカマフ及びブナのMWLはいずれも同じ傾向を示した. 次に, メタノール可溶物の化学的性質の解明を試みた. その結果, メタノール可溶物の分子量は2000〜8000程度に低分子化されており, β-0-4型結合が開裂され, β-β型やβ-5型等の縮合型の構造が残存していることが明らかになった. また, UV及びIRスペクトル分析の結果, フェノール性水酸基やαカルボニル基の官能基等の含量も増大していることも併せて明らかになった. また, リグノセルロース中でリグニンと共存しているセルロースに対する炭酸ガスレーザーの作用を分析した結果, セルロースの場合はリグニンの場合と異なり, 低分子化物はメタノールに不溶であり, 水を用いて容易に抽出されることが分った. セルロースの炭酸ガスレーザーによる低分子化物の中には還元性を有しないオリゴマーが多量存在することを証明し, そのいくつかのものについては構造を明らかにすることができた. これらの結果から, 炭酸ガスレーザーを照射したリグノセルロースより, リグニンの低分子化物をメタノールにより選択的に抽出することの可能性が示唆された. 炭素ガスレーザー照射による上記のリグニンの低分子化法は, 溶媒や触媒を全く使用せず常圧下連続的に行なうことができるという大きな特徴を有している.
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