研究概要 |
物性の異なる材料を組み合せて用いることより, 生体機能を賦活化させて, 材料周囲に生体自身の生理的活動としての器管を形成させることを目的として, このような生体の機能を引き出すための材料, そしてその材料のもつべき物性, そしてそれらの組み合せ等の研究を行い, 生理機能賦活化効果発現型人工臓器開発のための基礎的資料を得た, 我々はすでに人工血管を研究の場として本研究のための基礎的研究を行ってきた, その結果, 人工血管を植え込むと, 生体自身がその材料を枠組として新しく血管壁を形成してゆく. その過程を観察し, 種々の条件を負荷したり, 特殊環境をその場に導入した結果, 一般に用いられているポリエステル布製人工血管で, 特に定有孔性人工血管の場合, 新生血管壁形成が著しく遅延するが, ポリエステル繊維を従来のものより約100分の1程度の太さまで細くすることによって, 細胞活動を活性化し, 血管壁形成を促進させることを認めた. さらにコラーゲンやゼラチンが共存することによって, その治療を促進させることも認めた. このような事実は, 従来用いられていた材料でも, 材料のサイズを変化させたり, 特性の異なる材料を組み合せることによって, 生体機能を引き出し, 器管を形成させることが出来ることを明らかに示すものであった. このようなことから, さらにそのポリエステル繊維の太さを変化させたり, 繊維表面の親水性度を変化させた場合の, 細胞との親和性を評価した結果をもとに, 細胞が本来もっている生理機能を材料がどこまで引き出せるかの研究を併せて行った. その結果, 繊維は細ければ細い程良いこと, および疎水性繊維より親水性繊維の方が親和性が高いこと, またゼラチンやコラーゲンを併用する場合に, 精製したコラーゲンよりも熱高性させて, 構造上の変化を来した変性コラーゲンや高性ゼラチンの方が, 細胞との親和性がすぐれていること等を明らかにした.
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