研究概要 |
生きた細胞内へ機能性たんぱく質を高い効率で送りこむ輸送システムを開発することにより遺伝病に対する酵素置換療法と免疫系のマクロファージによる抗原提示能を高めて抗体生産の効率を上げる目的で次の研究をした. まず, それ自体毒性も抗原性もない血清糖たんぱく質α_2-マクログロブリン(α_2M)に酵素や抗原たんぱく質を結合する条件を設定し, α_2M-分子に対し-分子の外来たんぱく質をプロテアーゼの作用を利用して結合する事に成功した. ついでこの複合体を培養細胞に与えると細胞は効率よく複合体をとりこむ. このとりこみが, 目標通りα_2Mに対する特異的リセプターを介したエンドサイトーシスによるものであることを示した. こりこまれたたんぱく質や酵素は細胞内でゆっくりリソソームに運ばれてゆくが, これがリソソーム酵素である場合はリソソーム内で酵素活性を発現することができるので, リソソーム酵素欠損症の遺伝病に対する療法として開発できる可能性がある. 細胞が抗原提示能を持ってマクロファージである場合は, α_2Mにウィルス抗原たんぱくを結合させて与えることにより, マクロファージへのとりこみ, 抗原提示, ヘルパーTセルの活性化等を経て最終的にBセルによると考えられる抗体の産生が上昇することがわかった. 現在この方法を利用して効率的なワクチンの製造を行なうプロジェクトを組んで準備中であるが, 今後次のような点に注意して研究を有意義なものとしてゆく方針である. まず, 効果のあがる抗原の種類をふやすこと, 次に, α_2Mにそのものでなくとも, α_2Mのリセプター結合部位を抗原に結合するだけでよいかどうかを確かめる. ついで, リセプター結合部位を人工的に大量に生産する. このようにして使いやすい高効率ワクチン生産体系を作り上げてゆく.
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