研究概要 |
ジ・ターシャル・ブチル・テルル(DTBT)を用いて, HgTeのエピタキシャル成長を試みた. DTBTは成長装置の導入口付近でクラックした. EPMA評価より, 反応管温度が120°C以上ではストイキオメトリを満たす膜がInSb上に堆積することを確認した. 220°C以上では, 成長速度は基板温度の低下に伴って減少し, その活性化エネルギーは約20kcal/mo1であった. しかし, 220°C以下では成長速度が再び増加して極大値をとり, 160°C程度においても1μm/h程度の成長速度が得られた. 異常成長の原因は明瞭ではないが, RHEEDパターンより200°Cの天恩で単結晶が成長したことを確かめた. また, 基板温度が160°Cでも多結晶を得た. しかしストリーク状パターンが得られた試料においても, ノマルスキー光学顕微鏡にはミクロな凹凸があった. DMCdとDETeを用いた真空MOCVD法により, InSb上にCdTeの低温成長を実験した. DETeは670°Cでクラックした. 300°C以下では成長速度は約4nm/minと一定になった. 成長膜は, 250°C以上では単結晶, 120°C以上では双晶であった. これら成果を組合せることにより, カドミウム水銀テルル薄膜の低温エビタキシャル成長が可能になると考える. CdTe/InSbヘテロ接合のエネルギー帯構造に関する考察から, これが77Kにおいては, 室温のSiO_2/Si構造のエネルギー関係を1/5に縮小したMIS構造とみなせることを指摘して, InSbの極度に高い電子移動度を利用した超高速MISトランジスタが実現できる可能性を示した. そして, 真空MOCVDおよびMBE成長したヘテロ構造のC-V特性が表面が蓄積状態から反転状態まで変化することを確かめて, この指摘が正しいことを実証した.
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