研究概要 |
生体機能材料を医用材料として生体に埋め込み, または, 生体液と接触させると, 生体側のプロテアーゼの消化作用にさらされて, 材料側の蛋白質・ペプチドが分解してしまう可能性が考えられる. このようなプロテオリンスを制御する複合高分子材料を設計・製作することがこの研究の目的である. 生体内プロテアーゼのうち, 血管内プロテアーゼは血栓形成またはフィブリン溶解現象に関わるものが主であり, これらはまた別途に検討されるべきものとして, ここでは, 従来研究の少なかった細胞内プロテアーゼの消化作用に対抗する制御系を備えた材料の開発に注目して研究を進め, 次の成果を得た. (1)細胞Ca^<2+>プロテアーゼ(カルパイン)の制御因子(カルパスタチン)の構造解析 CDNAクローニングとそのスクレオチド配列の決定により, ブタ・カルパスタチンの蛋白質一次構造を明らかにした. その結果, カルパスタチンは713個のアミノ酸よりなる分子で, 1分子の中に, 高い相同性を持った約140アミノ酸残基から成る4回繰り返しドメイン構造が存在することが知られた. さらに当該CDNAを組み込んだプラスミドを用い, これらのドメイン蛋白質を大腸菌に発現させた結果, 各ドメインはそれぞれ単独でカルパイン阻害活性を有することが知られた. (2)カルパスタチンの活性断片 カルパスタチンの単独ドメインをさらに低分子化して活性断片を作成することに成功した. ドメインの中央部分, 約50アミノ酸残基よりなるペプチドに阻害活性があるので, これを用いた複合高分子材料の作製に向って研究を進めつつある.
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