研究概要 |
ペプチドや蛋白質中での電子移動を分子レベルで制御することによって酸化還元反応を経由する生体機能を調節することができる. この様な意味でのバイオエレクトロニクス材料を人工アミノ酸を含むペプチドや蛋白質から構成することが本研究の目的である. 1.光学活性な新規人工アミノ酸の合成とそれらを含むポリペプチドの合成 電子供与性あるいは電子受容性の芳香族基をもつ新規の光学活性アミノ酸の合成が確立された. それらの光学純度もほぼ100%であることが確認された. これらのアミノ酸を含み, 右巻α-ヘリックス構造をとるポリペプチドが合成された. 円二色性スペクトルの解析やコンホメーションエネルギー計算の結果からポリペプチド中の一対の電子供与基, 受容基間の距離が計算された. またアントリル基を周期的に含むポリペプチドが新たに合成され, 同様な解析の結果からアントリル基間の距離が求められた. 2.α-ヘリックスに沿った電子移動に関する研究 α-ヘリックス中に一対の電子供与基(D)と電子受容基(A)を含むポリペプチドについて, DからAへの光をトリガーにする電子移動が調べられた. その結果電子移動効率はDとAとの距離に大きく依存し, 例えばDとしてp-ジメチルアミノフェニル基, Aとしてピレニル基を使った場合では, r=7〓では90%も電子移動が起るが, r=13〓では数%しか起らないことがわかった. このような単純な系での電子移動効率が評価されたのは本研究が初めての例である. 3.分子メカニックス, 分子グラフィックスによるコンホメーション計算 任意のアミノ酸シーケンスをもつポリペプチドのコンホメーションエネルギーを計算し, 最も安定なコンホメーションを図示するためのソフトウェアが開発された.
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