研究概要 |
1.GaAs基板に種々の組成のZnSxSe_<1-x>をMBE成長させ, 格子定数と熱膨脹係数の不整合による成長層の格子ひずみを, X線回折・フォトルミネッセンスにより評価した. 膜厚の薄い試料(0.1〜0.3μm)の場合, 混晶バルクの格子定数がGaAsの格子定数より大きい組成では, 成長方向の格子定数a_〓はバルクの値より大きくなった. このことは, 成長層がコヒーレント成長し, 面内で圧縮応力を受けていることを表わしている. 混晶バルクの格子定数がGaAsの格子定数より小さい場合は状況が逆になった. 観測されたa_〓の値は, コヒーレント成長を仮定した計算結果とよく一致した. 一方, 厚い試料では, a_〓はバルクの格子定数より全般に小さくなった. これは, 成長層の熱膨脹係数がGaAs基板のそれよりも大きいことの影響と考えられる. これらのデータを見ると, 数μmという実用的膜厚の試料の室温でのa_〓がGaAsの格子定数に等しい状態を"格子整合している"と判断するのは適当でないことがわかる. 薄い成長層のフォトルミネッセンスでは, 自由励起子発光の分裂が観測された. これらは, 面内応力によって縮退のとけた価電子帯に関係していることが確認された. 2.格子緩和と転位の発生の関連を調べるため, 転位に関係しているといわれているY発光を詳細に検討した. ZnSeでは600〓までY発光は見られなかった. 緩和発生の臨界膜厚は, X線回折からは1500〓, Matthewsの理論からは320〓となった. 臨界膜厚は, X線回折によるよりもY線の有無により, より正確に決定できると思われる. 一方, 混晶では0.04<x<0.2の範囲でY発光が消滅した. この原因として, 格子整合による転位の減少, 混晶化によるlattice hardeningなどが重量していると考えられる. 3.MBE成長中にHgランプおよびHg-Xeランプからの光を照射すると, Sの付着確率の増加が観測された.
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