研究概要 |
可視領域の光エレクトロニクス材料として有用なII-VI半導体の良質な超格子をうるためには, 層と界面の歪と転位の実態をつかむ必要がある. 本研究ではMOMBE法, ホットウォール法, MOVPE法により作製された. ZnS, ZnSe, ZnTe系超格子の層と界面の歪をラマン分光法を用いて明らかにした. ZnS-ZnTe超格子のラマンスペクトルには, ZnS層及びZnTe層による二つのLOフォノンピークが観測される. それらのピークは格子不整合による歪によってバルクの物質より位置がずれている. 両層の厚みの等しい超格子では, 主にZnTe層に歪が存在することがわかった. ZnS-ZnSe超格子のラマンスペクトルにも, ZnS層及びZnSe層による二つのLOフォノンピークが観測される. この超格子の場合は主にZnS層に歪が存在し, さらにその歪は不均一であることがわかった. これらの超格子においては, 歪が主にどちらの層に存在するかは基板の物質との格子整合に依存している. 基板として用いたGaAsの格子定数は, 5.65〓であり, ZnSeの格子定数5.67〓に最も近く, ついで, ZnSの5.41〓, そしてZnTeの6.10〓という順に近い. それ故ZnS-ZnTe超格子ではZnTe層に, ZnS-ZnSe超格子では, ZnS層に歪が生ずることになる. ZnS-ZnSe超格子を作製する際に基板にZnSxSe_<1-x>のようなバッファー層をいれれば, 歪が各層に均等にかかるようになると期待される. 今後はラマン散乱の励起波長依存性を測定し, 共鳴効果を調べ, 分光学的研究による電子状態に関する知見と組み合わせて研究をすすめる予定である.
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