研究概要 |
半導体材料中にはいろいろな欠陥が存在しているが, 化合物半導体を考えると, 特に格子欠陥やヘテロ接合界面領域に存在する欠陥および界面歪などが重要である. 本研究では, これらヘテロ界面近傍に局在する欠陥や界面歪を, 3d遷移金属不純物ルミネッセンス法という分光学的手法によって評価することを目的としている. この方法は, すでにGaAs結晶中の総視的評価においてその有用性が確認されており, 本研究では, GaAs結晶基板上にOMVPE法でエピタクシャル成長させたZnS_xSe_<1-x>/GaAs:Crヘテロ接合に適用し, その界面領域に存在する歪の測定を行い, S組成依存性を詳しく調べた. 試料としてS組成の異なる一連のZnS_xSe_<1-x>/GaAs:Crヘテロ接合を作成し, ヘテロ界面におけるGaAs中のCrに対する発光スペクトルを測定した. この結果, 格子不整合の正, 負にかかわらずCr発光線のピーク位置は高エネルギー側にシフトし, また線幅が増大していることがわかった. これらの実験結果は, GaAs基板結晶に圧縮性の2軸性応力が加わっていることを示しており, 両半導体の格子定数における不整合によって生じる歪ではないことが明らかになった. 実験データの解析より, ZnS_xSe_<1-x>/GaAsヘテロ界面には, 従来より云われている格子不整合による歪ではなく, 両半導体の熱膨脹係数の違いによって生じる歪が存在することが明らかとなった. 即ち, GaAs基板上にZnS_xSe_<1-x>をエピタクシャル成長するときの成長温度から室温ならびに発光測定温度(4.2K)まで冷却すると, エピ膜の方が相対的に収縮し, GaAs基板には2軸性応力が加わるものと考えられる. このようなGaAs基板上の圧縮性の2軸応力の存在を考えると, 一連の実験データがうまく説明できることがわかった. 従って, エピ膜は単純なコヒーレント成長していないといえる.
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