研究概要 |
液晶は固体あるいは液体にはない特性を示す機能性材料として近年益々注目を集めている. 表示材料やセンサーなど既に広く利用されているが, 最近の目覚しいマイクロエレクトロニクスなどの発展に伴い, 更に高度な機能が液晶に求められつつある. これらの要求に対しては新しい発想による開発研究が要望される. そこで, 我々は金属の持つ独特の性質を液晶に付与することにより, 新しい機能の発現を期待して, 含金属液晶分子の構造設計を行い有機金属化学の手法を駆使して合成を試みた. 今回は, 直線状の分子構造を持つ新規な有機金属高分子液晶化合物とホウ素を含む低分子液晶化合物の合成に成功したので, その特性についても研究を行った. 1.有機金属高分子液晶 直線状有機金属高分子の新しい合成法を検討した結果, 末端にハロゲン配位子を持つアセチレン架橋二核パラジウム錯体を等量の4.4'-ビピリジル存在下にヘキサフルオロリン酸カリで処理するとカチオン性の直線状高分子パラジウム錯体(I)が高収率で得られた. Iはそのイオン性を反映して誘電率の高い溶媒, 例えば塩化メチレン, アセトン, アセトニトリルなどに易溶で, 塩化メチレン中高濃度ではネマチック液晶を生成した. また, この液晶は外部磁場に対して比較的速い応答性を示し, 磁場方向に分子長軸を向けて配列することを31P-NMRスペクトルによる研究から明らかにした. 2.有機金属低分子液晶 1, 3, 2-ジオキサボリナン環が液晶分子の基本骨格として優れていることは既に見いだしている. 今回はメトキシ基とニトリル基を持つ種々の誘導体を合成してその構造と液晶性の関連性を検討した結果, ジオキサボリナン骨格が液晶性に優れていることやスメチック相を取り易いことなどが分かった. また, X線結晶解析を行い, 分子軌道法による考察に必要な基礎データを得た.
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